日本では大企業と中小・零細企業が対等な関係になれるのか?

『週刊東洋経済』を愛読されているビジネスパーソンは多いかと思いますが、巻末に「長老の智慧」という一ページの連載記事が掲載されています。
本日発売された東洋経済の最新号を見たところ、三鷹光器の創業者である中村義一氏(現、代表取締役会長)が登場していました。
 
三鷹光器という会社をご存じのない方のために簡単に説明すると、天体望遠鏡の開発で培った光学技術を駆使し、天文機器をはじめ宇宙観測機器、医療機器、産業機器、太陽エネルギーシステムを手掛ける中小企業。
国内の大手企業はおろか、NASA(米国航空宇宙局)やドイツのライカ社とも関係が深く、技術力に定評があり、2006年には中小企業庁から「元気なモノ作り中小企業300社」に認定されています(詳しくはこちら)。
 
さらに詳しいことについては、拙著『これがドクソー企業だ』でも紹介しておりますので、併せてご覧ください。
 
中村氏が登場する「長老の智慧」は全4回、今週発売号が最後です。
そんなことに気づかず、これまでずっと見逃していました。
 
拙著で紹介していることからもわかるように、私は過去に三鷹光器を取材したことがあり、そのとき対応していただいたのが中村氏でした。
誌面を見ると、相変わらず元気な様子で、懐かしさもこみ上げてきたのですが、何よりも目に留まったのが見出しでした。
誌面には「アイデアを生む中小企業と考えなくなった大企業」という見出しが踊っていたのです。
 
中村氏によれば、最近、ある大手自動車メーカーが三鷹光器を訪れ、いきなり「下請けになれ」と命令してきたとのこと。
何でもその会社の会長は、すべて下請けにするのが主義だそうで、中村氏は「俺も同じ。皆さんを下請けにする主義です。それが呑めないならダメです」と言って断ったそうです。
 
見出しは、このエピソードを受けて付けられたものです。
 
中村氏は誌面でも指摘していますが、この大企業は三鷹光器からアイデアを引っ張り出し、さも自分たちの力だけでつくったことをアピールしたかったのでしょう。
ズルい魂胆がミエミエです。
 
中村氏は「ライカなどはアイデアを考えた人への敬意を忘れていない。ライカに収める医療機器には、三鷹光器のブランド名も入れている。販売もそれぞれができることになっている。(中略)やはり人間は自分で考えて、世の中がよくなるものをつねに生み出していくようにしなければいけない」と言っています。
 
ライカの例は、私が取材したときにも話していただきましたが、なぜ日本の大企業の多くは中小・零細企業に敬意が払えないのでしょうか?
それは、日本の大企業はライカと違い、中小・零細企業を対等な関係だとみなさないからです。
中小・零細企業が持つ優れたアイデア、技術力は自由に使って当然といわんばかりの態度には、敬意の欠片もありません。
武士が農民を見下した江戸時代の身分制度(士農工商)の精神が、いまでも生きているかのようです。
だから、恥も外聞もなく、いきなり「下請けになれ」なんて傲慢なことが言えるんでしょう。
 
大手自動車メーカーが三鷹光器にとった態度のような話は、中小企業を取材しているとよく聞きます。
下請けから無理やり図面を提供させ、その図面をコストの安い中国企業に渡してつくらせた話などはザラです(どこで聞いたかは忘れましたが……)。
 
どうしたら、日本では大企業と中小・零細企業が対等な関係になれるのでしょうか?
対等な関係になれないと結局、多くの中小・零細企業はいつまでたっても自立できず、特定の企業に取引を依存することになります。
 
中小・零細企業が三鷹光器のように自立するためには、誰もが一目置くほどの技術力を持つ、販路を拡大する、オリジナルブランドを立ち上げる、など企業レベルですべきことがあります。
しかし、こうしたことに取り組むのも重要ですが、大企業と中小・零細企業がともに、それまでの悪しき取引慣行や商習慣を断ち切ることも大切ではないでしょうか?
中小・零細企業が倒れて真っ先に困るのは、取引関係にある大企業なのですから、そうならないためにも大企業は、中小・零細企業の自立のために自らを律するべきでしょう。
 
政府も中小・零細企業を救済しようと思ったら、真の自立が果たせるように、それまでの悪しき取引慣行や商習慣を改善できるように本気で支援することが不可欠です。
一応、下請代金遅延等防止法で下請取引のルールが決められていますが(詳しくはこちら。その1その2)、違反した場合は50万円以下の罰金、禁止行為を行った場合は勧告措置と、罰則が緩く、個人的には実効性に疑問を感じずにはいられません。
この程度の罰則では、大企業は痛くも痒くないはず。
これでは、大企業と中小・零細企業は対等な関係になれないでしょう。
 
今回の「長老の智慧」を読んでいたら、何だか暗澹たる気持ちになってきました。
この気持ちが晴れるのはいつになることやら……と考えるだけで、頭が痛いです。
 
週刊 東洋経済 2009年 10/3号 [雑誌]週刊 東洋経済 2009年 10/3号 [雑誌]
(2009/09/28)
不明

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フリーランスになった理由(わけ)

昨日、たまたまTBSの「ぴったんこカン・カン」を観ていたところ、ゲストにフリーアナウンサーの宮根誠司氏がゲストとして出演していました。
 
ご存じない方のために説明すると、宮根氏はABC(朝日放送)出身で、関西では大人気のアナウンサー。
関東では昼2時の「情報ライブ ミヤネ屋」(【月-金】13:55~15:50/読売テレビ・日本テレビ系列)ぐらいしか観る機会がありませんが、関西ではこのほか「おはよう朝日です」(【月-金】6:45~8:00、ABC)でも観ることができます。
平日に2つの番組を帯で持っているとは、すごい売れっ子ですね。
「浪速のみのもんた」と言われるだけあります。
でも、関東ではほとんど、ミヤネ屋でしかお目にかかれないので、すごさがイマイチ伝わってきませんが、ミヤネ屋での番組の仕切りっぷり個人的に好きです。
 
さて、ゲスト出演した「ぴったんこカン・カン」では、宮根氏の案内で大阪をめぐるという番組お約束のパターンでしたが、焼肉屋で(個人的に)面白い話が聞けました。
それは、司会進行を務めるTBSの安住紳一郎アナが宮根氏にフリーになった動機を尋ねたときのこと。
宮根氏はこう答えました(関西弁を文字にしているので、読みにくいかもしれません)。
 
会社には何の不満もなかったんですけれど、ある日突然、自分の看板を取ったらどうなんねんやろうと思ってしまって。【ABC】の宮根、【おはよう朝日】の宮根っていうことは、一つ台に載せてもうてるやん。僕がこの看板を全部外したときに、どの程度なもんなんだろう、っていうのを、ある瞬間に知りたくなってしまって。
 
こんなことを考えてフリーになったんですね。
このことで宮根氏は一年悩み、その末にABCを退職して独立するわけですが、さらに、こう続けました。
 
定年まで悩み続けるやろうな、って思ったときに、悩み続けることの苦しさから逃げるためにフリーになったというところがあります。
 
職業が違うとはいえ、私も同じフリーランス。
他のフリーランサーが独立しようと思ったきっかけを知ることは、なかなかないので、非常に貴重でした。
 
では、私がフリーになった理由は何か。
宮根氏と似て「自分の力がどれだけ通用するか試してみたい」という思いもありましたが、最大の理由は「何にも左右されず好きな仕事に打ち込みたい」というものです。
 
フリーになる以前、私は2つの会社で月刊誌の編集者をしていました。
編集という仕事はそれなりに楽しく、キャリアもそこそこ重ねてきましたが、企業に勤めている以上、人事異動は避けられず、好きなこと、やりたいことだけやる、というわけにはいきません。
意に沿わない異動も起こります。
そうなったとき、再び好きな仕事、本来やりたい仕事にいつか復帰できる、という保証は何にもありません。
 
「好きでもできないのは能力不足のせい。自業自得じゃないか」「復帰は自分の努力で勝ち取るべき」とお考えの人もいるでしょう。
確かにそうだと思います。
しかし、いくら努力しても、人事異動は上層部のさじ加減でどうにでもなるのも事実です。
私がそれまで勤めてきた会社は、いずれもそういう傾向があったので、努力が実を結ぶとは思えませんでした。
 
他人に左右される人生は御免だ
 
勤めていた会社がゴタゴタしていたこともあり、独立を決意したとき私の心境は、こんなものでした。
ちょっと心が病んでいたのかもしれません。
 
私の場合、宮根氏のように一年も悩むことなく、すんなり結論が出たのですが(何せ背負っているものの大きさが違いすぎますからね)、それでも身内の理解を得るのには時間がかかりました。
でも、最後は押し切ってしまったわけです。
 
宮根氏の話を聞いて、独立を決意した頃の心の葛藤が甦ってきました。
これはきっと、「初心を忘れず熱い気持ちを持ち続けろ」という教えなのかもしれません。
  
しかし、それにしても、番組で紹介された大阪・鶴橋の焼肉屋「」は雰囲気があり、味もうまそうでした。
いつか鶴橋に行く機会があったら、ぜひ立ち寄ってみたいと思います。
 

プロフィール

大澤裕司(yuji)

Author:大澤裕司(yuji)
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2005年から本格的に、ライター稼業で生計を立てています。
主な取材分野は技術開発、中小企業、モノづくり(生産技術、生産管理も含む)、IT活用、人材育成、など。
2008年8月には初の著書『これがドクソー企業だ』を上梓しました。

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